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Last updated about 9 hours ago

9月9日 PETでアミロイドが検出される皮質領域は7年以上前から皮質が厚い(Nature Neuroscience  9月号掲載論文)

about 9 hours ago

マウスのアルツハイマー病(AD)モデルでは、遺伝的に均一な系統にアミロイド(Aβ)を蓄積させることでADを発症させられることから、Aβの蓄積によるADの誘導には他の要因はほとんど関係ないと考えてしまう。また、AβやTau以外のAD評価にはもっぱらMRIによる海馬を含む脳全体の大きさが使われ、脳の萎縮と=ADと思いがちだ。しかし、ADの発症までの軌跡を調べる大規模コホート研究から発症前のデータが得られるようになり、人間ではAD発症までの軌跡も極めて複雑であることが明らかになってきた。例えば、Aβ蓄積がPETで検出されるようになると脳皮質は厚くなることがわかってきた。逆にTau蓄積が始まると今度は皮質が薄くなる。即ち、Tau蓄積で細胞が死ぬと皮質は薄くなるが、Aβの蓄積は皮質の肥大を誘導していることになる。事実、Aβを除去する抗体治療が始まってわかったことは、Aβ除去により急速に皮質が薄くなることで、Aβが何らかの機構で脳皮質の肥厚を誘導していることがわかる。 今日紹介するノルウェー・オスロ大学からの論文はノルウェー及びカリフォルニアバークレイで行われた認知症の長期コホート研究でAβ蓄積がPETで検出された方についてMRI画像を遡って調べ、Aβ検出の7年以上前から脳皮質の肥厚が認められることを示した研究で、9月号のNature Neuroscienceに掲載された。タイトルは「Cortical thickness changes precede high levels of amyloid by at...

9月8日 慢性痛を頭蓋のPETで診断できる?(9月2日Science Translational Medicine)

1 day ago

今日は全く前置きなしに論文を紹介する。と言うより、前置きが考えつかないほど風変わりな研究だ。ハーバード大学からの論文で、なんと脳腫瘍や炎症の指標としてPET検査が行われているtranslocator proteinの頭蓋内発現を調べることで、慢性の痛みが診断できるという、驚く話で、9月2日Science Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Elevated translocator protein in skull bone marrow is linked...

9月7日 AIデザインタンパク質を組み合わせた人工ウイルスベクター(9月2日Natureオンライン掲載論文)

2 days ago

RNA薬やCRISPR編集などのおかげで、遺伝子治療しか方法のない様々な希少疾患の治療がゆっくりではあるが実現し始めている。しかし10年近く論文を読んでいるが、遺伝子を細胞に届けるためのベクターやキャリアの進展は追いついていない気がする。 今日紹介するドイツ・ミュンヘンにあるヘルムホルツセンターからの論文は、これまでのウイルスベクターが持っていた様々な問題を、Bakerさんたちが開発したRFdiffusion等で設計された人工ペプチドを組み合わせることで解決できることを示した研究で、9月2日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Creating bottom-up RNA transfer vehicles from synthetic protein assemblies(人工タンパク質を組み合わせて現場からRNAトランスファーキャリアを作る)」だ。 パッとタイトルを見たとき、新しいウイルスベクターのAI設計で、以前紹介したファージウイルス設計に近い研究(https://aasj.jp/news/watch/29344)かと勘違いしたが、実際にはタイトルにある{Bottom up}が示すように、効率の高いRNA導入法を模索していた現場の研究者が、最近のAIによるタンパク質デザイン研究のパワーを認識して、これまでのデザインタンパク質を現場の知恵と組み合わせて、効率のいいRNA導入法を開発したという話だ。その意味で、Bakerさんたちの新しいタンパクデザインが医療研究現場に入ってきた???いう実感がある研究だ。...

9月6日 細胞のmRNA発現を生きたままモニターする(9月1日Cellオンライン掲載論文)

3 days ago

細胞が転写しているmRNA発現をトランスクリプトームと呼んでおり、これを調べるために現在最も利用されているのは、発現しているmRNAを片っ端からシークエンスして、読んだ回数を発現と見なすRNAseqだ。これを利用するためには、細胞を破壊してmRNAを取り出す必要があった。 これに対し、今日紹介するハーバード大学Broad研究所からの論文は、マウス白血病ウイルスの Gagタンパク質を細胞に発現させ、細胞内のRNAを細胞外へ運び出させることで、細胞を生かしたままmRNAの発現変化を網羅的に調べることを可能にした研究で、9月1日Cellにオンライン掲載された。タイトルは「Live-cell transcriptomics with engineered virus-like particles(ウイルス用のタンパク質を用いて生きた細胞のトランスクリプトミックスを可能にする)」だ。 以外と単純な方法で、これまでどうしてトライされなかったのかが不思議なぐらいだ。レトロウイルスはgag, pol, envという3種類のタンパク質をコードしており、gagはウイルスゲノムを取り込んだウイルス骨格を作る。このgagを細胞に発現させて、細胞内のRNAをランダムに取り込ませ、ウイルスと同じように細胞外に吐き出させるという戦略だ。しかし、ウイルスRNAを選択的に取り込むように出来ているgagが本当に他のRNAを取り込めるのかと思ってしまうが、ウイルスRNAにあるψ配列がない場合は、選択性なくRNAを取り込むように出来ているよ???だ。実際には、gagが細胞質で多くのRNAと出会えるように膜にアンカーする部分を取り除いて細胞に発現させ、その細胞から吐き出されるgag粒子を集め、RNAをシークエンシングしている。 もちろん吐き出される量は少なく、当然のことながら細胞質RNAをより多く捕まえるが、細胞内全体で検出されるRNAを十分反映していることが示されている。...

9月5日 幻覚剤シロシビンはガンの化学療法で発生する末梢神経障害を抑制する(9月3日Science掲載論文)

4 days ago

大きなガンで浸潤が見られる場合は、遠隔転移が認められなくても、基本的には起こっているとして治療する。そのための治療が、アジュバント治療で、局所に対しては放射線、全身に対しては化学療法が行われる。私の場合は年齢のこともあり一般の化学療法は受けないと決めているが、多くのガンで用いられるのがシスプラチンなどの白金を含む化合物で、副作用は強い。その中の一つが、感覚神経の異常で、ちょっと風に当たると痛みが来ると行った過敏症から、触覚や聴覚が失われる障害が長期に続く末梢神経障害で、治療後も長く続く。 今日紹介するテキサス大学MDアンダーソンガン研究所からの論文は、このやっかいな感覚神経障害が、最近うつ病に使われるようになった幻覚剤シロシビンを治療前に投与することで、長期に末梢神経の副作用を抑えるという、本当なら化学療法をこれから受ける患者さんにとっても重要な研究で、9月3日Scienceに掲載された。タイトルは「Psilocybin prevents chemotherapy-induced peripheral neuropathy through mitochondrial trafficking preservation(シロシビンは化学療法によって起こる末梢神経障害をミトコンドリアの移送を維持することで守る)」だ。 論文からは何故このアイデアが出てきたのかはっきりはしないのだが、痛覚受容体を発現する末梢神経がセロトニン受容体を発現していること、シ???シビンがセロトニン受容体(5−HTA2)を介して作用することなどから、このアイデアが出てきたのではないだろうか。論文では最初からシスプラチンをマウスに投与する系、あるいは腫瘍を移植して、手術前、手術後にシスプラチンを投与する、人間の治療と同じプロトコルで末梢神経障害を誘導出来ること、そしてシロシビンを化学療法前に2回投与することで、長期間副作用の発生を抑えることができることを明らかにしている。結論としては、シロシビンは神経症状のみに作用して末梢神経障害を抑え、ガン治療には影響がない。患者さんにとってはこれで十分で、テキサス大学のサイトでも第2相の治験が始まっているようだ。 まず早く現れる末梢神経過敏症に対する効果を調べると、末梢神経細胞自体の興奮には全く影響を及ぼしていないが、シスプラチンによって誘導される大脳皮質の活動の低下を、シロシビンはセロトニン受容体を介して抑制する。これが過敏症を抑える明確なメカニズムは示されていないが、過敏症については、シロシビンは中枢の回路を変化させて痛みの認識を鈍化させるようだ。...

9月4日 リボゾームとmRNAを最初から結合させる直交型翻訳システム(9月2日Natureオンライン掲載論文)

5 days ago

リボゾームはmRNAと結合してコードをアミノ酸配列に変える翻訳が行われる場所だが、基本的には転写されたあらゆるmRNAと結合して翻訳するように出来ている。実際には30SリボゾームRNA(rRNA)が細胞中でmRNAと衝突を繰り返しているうちにmRNAの開始コドンの少し上流にあるRibosome binding siteと結合することで、翻訳が開始する。多くのmRNAに対応するユニバーサルな方法として全ての生物が採用している。 これに対し、一つのリボゾームを特定のmRNAの翻訳だけに使う人工的な試みが行われており、直行型翻訳システムと呼ばれている。宿主と独立した翻訳システムによって、通常の翻訳では使われない非天然アミノ酸を使ったペプチドを作らせることが主要な目的だが、翻訳効率はまだまだ低い。 今日紹介するイリノイ大学からの論文は30S rRNAのサブユニット16S rRNAにmRNAを共有結合させることで、一つのmRNAの翻訳だけを行うリボゾームを可能にするための基礎的検討を行った研究で、9月2日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Rewiring the ribosome to translate proteins...

9月3日 ヤモリからわかる性染色体の進化(8月27日 Science掲載論文)

6 days ago

性染色体というと、一般にはXX(メス)/XY(オス)を思い浮かべると思うが、他にも鳥類に代表されるZZ(オス)/ZW(メス)も存在する。さらに遡って魚類や両生類になると、両方のタイプの性染色体が存在するだけでなく、性染色体の区別がつきにくい種も存在し、極めて多様だ。以上のことから、まず環境によって性が決まる、即ちはっきりと性染色体を持たない種から、XYとZWという2つのタイプの染色体によって性を決める方法が分かれてきたと考えられている。 同じような多様性は、Gecko(ヤモリ)でも見られることが知られることから、ヤモリは性染色体進化過程を知る上で重要な動物として研究されている。今日紹介する中国中山大学からお論文は、性染色体を持つヤモリの全ゲノム解析から、性染色体の形成過程を明らかにしようと考えた研究で、8月27日Scienceに掲載された。タイトルは「Genomic predisposition is associated with the direction of sex chromosome evolution(性染色体進化の方向性はゲノム自体の傾向で決まる)」だ。...

9月2日 tRNAを使った遺伝子治療(8月27日Science掲載論文)

7 days ago

CRISPRによる遺伝子編集が可能になり、突然変異を正常化する遺伝治療が可能になったとはいえ、臨床応用まで解決すべき課題は多い。従って、できる限り様々な方法が変異に応じて開発されることが重要になる。遺伝子がコードしているタンパク質の機能不全につながる様々な変異があるが、11%が翻訳の途中でストップコドンが入るタイプだが、これはストップコドンを読み飛ばしてしまうことで最後まで翻訳させるという方法の開発が行われている。一つはリボゾームに結合する抗生物質を改変して合成されるリードスルー薬だが、治験が行われている段階だ。もう一つの方法は、アミノ酸を結合するtRNAのコードをストップコドンに変えたサプレッサーtRNA(stRNA)を合成し、これを細胞に供給する方法が研究されている。 今日紹介するトロント大学からの論文は嚢胞性線維症(CF)の原因遺伝子(CFTR)のストップコドンを治療できるサプレッサーtRNAとそのデリバリーについて徹底的にトライアンドエラーの検討を行い、マウスでは治療可能な脂質ナノ粒子とサプレッサーtRNAの組み合わせを突き止めた研究で、8月27日Scienceに掲載された。タイトルは「Nonviral delivery of chemically modified tRNA rescues nonsense mutations in cystic...

9月1日 アルツハイマー病に関与する新しい分子ERBB4(8月24日 Natureオンライン掲載論文)

8 days ago

アミロイドβ(Aβ)やTauの蓄積がアルツハイマー病(AD)での神経機能低下や細胞死に関わることは間違いないが、シナプス結合が低下して、最終的に細胞が死んでいくまでには様々な分子が関わっている。ということは、AβやTau以外にもAD治療の標的は存在することを意味する。 今日紹介する韓国・科学技術先進研究所からの論文は、ADの初期からERBB4が興奮神経に発現することがADでのシナプス結合の低下の原因である可能性を明らかにした研究で、8月26日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Aberrant excitatory neuronal ERBB4 promotes Alzheimer’s disease pathology(興奮神経の異常ERRB4発現がアルツハイマー病の病理を促進する)」だ。 このグループはADでアストロサイトやグリアが興奮神経のシナプス突起を貪食で除去する過程に興味を持って研究していたようで、アミロイド沈着モデルマウスで、アストロサイトやミクログリアが興奮神経ではシナプスを貪食し、逆に介在神経では貪食が低下することを観察する。そしてこの原因が興奮神経が過興奮することで生まれるシナプス増加を抑える反応であることを、神経興奮実験で明らかにする。この結果は、ADの変化の最初に、興奮神経が過興奮するというこれまでの結果と合致している。 この過興奮によるシナプス除去に関わるメカニズムを探るべく、ADモデルマウスのsingle cell転写解析を行い、様々な変化の中でも受容体チロシンキナーゼで、乳ガンのHer2分子と同じファミリーに属するERBB4がADの興奮神経に過剰発現していることを発見する。...

8月31日 SGLT2阻害剤はpantothenate kinase1にも作用して心機能を上げる(8月27日Science掲載論文)

9 days ago

糖尿病の治療薬として開発された新しい薬剤ではGLP-1受容体アゴニストが一般にも有名だが、SGLT2阻害剤も21世紀を代表する薬剤として多くの患者さんに使われている。SGLT2は腎臓の尿細管に存在するナトリウムとグルコースを同時に再吸収する酵素で、これを阻害することで血中グルコースを下げ、同時にナトリウム排泄を通して、様々な効果を発揮する。特に腎臓機能の保護と心臓機能の保護は重要で、今や糖尿病を超えて腎不全や心不全の中心的薬剤になっている。 心臓には発現していないSGLT2の阻害が何故心不全に効果を示すのかについては、エネルギー代謝の改善とナトリウム利尿作用などの2次的効果と説明されてきたが、SGLT2以外にも薬剤が作用するプロセスが存在するという可能性が常に指摘されてきた。実際臨床で使われている薬剤の心不全に対する効果の差が見られるし、切り出した心筋にも効果が見られることも報告されてきた。今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、切り出した心筋にたいしてSGLT2阻害剤の一つエンパグリフォロジン(EG)の効果を調べ、EGが作用する新しいメカニズムを明らかにした研究で8月27日Scienceに掲載された。タイトルは「SGLT2 inhibitors activate pantothenate kinase in the human heart(SGLT2阻害剤は人間の心臓でPantothenate kinaseを活性化する)」だ。 この研究ではSGLT2阻害剤としてEGだけを検討しているので、他の阻害剤で???じ効果があるかはわからない。研究では心臓のブロックの血流を保持した上で、EGを作用させ代謝学的にまず調べている。その結果、EGが心筋に直接作用して酸化的代謝を大きく改善し、これが心筋機能を高めていることを発見する。...

8月30日 「遺伝子名」から解放され「塩基配列」ベースに single cell RNA sequencing を解析するモデル Malva の誕生(8月26日 Nature オンライン掲載論文)

10 days ago

塩基配列に我々は様々な意味を付加したうえで理解する。人間の頭では、配列だけ見ても通常何のことかわからないから当然だ。例えば特定のゲノム配列にネアンデルタール人とか、デニソーワ人、あるいは縄文人や弥生人と意味づける。しかし、このような意味づけされたレファレンスを使わずに、ゲノム各部位の系譜をたどることで、ホモサピエンスと交雑した未知の人類が存在する可能性を示唆した論文を昨日は紹介した。そして最も広く行われている意味づけが遺伝子名だ。実際自分のガンを考える時でも HRBB2 や AR が発現しているので導管ガンに近いと考える。ただ自分で遺伝子発現を解析してみると、必ずレファレンスゲノムの上にショートリードの配列がマップされ、その頻度が計算される。即ち、一度は遺伝子名に還元するように解析ソフトが出来ている。このように一度遺伝子名にまとめるために計算コストは急上昇するだけでなく遺伝子配列に表現される様々な違いもしばしば捨てられてしまう。 遺伝子配列をアノテーションすることで膨大な計算コストが生じる single cell sequencing 解析を対象に、遺伝子名への還元をスキップして、配列だけで細胞を定義する Malvabと呼ぶモデルを開発したのが今日紹介するドイツ・ベルリンのマックスデルブリュックセンターからの論文で、8月26日 Nature...

8月29日 我々のゲノムに隠れている未知の古代人類(8月27日Science掲載論文)

11 days ago

我々ホモサピエンスのゲノムに、発掘された骨から特定されたネアンデルタール人やデニソーワ人のゲノムが存在していることはこのブログで何度も紹介してきた。これは発掘された骨からそれぞれのゲノムが解読され、それをレファレンスとして我々のゲノムを調べた結果だ。もちろんこれ以外の未知の人類がホモサピエンスと交雑していた第三、第四の可能性を否定できないが、これは第三、第四の人類が発見され発掘された骨などからDNAが解読できない限りわからない。 今日紹介するカリフォルニア大学バークレイ校からの論文は、レファレンスがなくてもゲノム各部位の系譜を作成することで、ホモサピエンス以外の人類との交雑の跡を特定できることを示した研究で、8月27日号のScienceに掲載された。タイトルは「Recovering signatures of archaic hominin introgression using ancestral recombination graphs(祖先の組み換えグラフを利用して古代人類の交雑の証拠を見つける)」だ。 レファレンスなしに古代人類との交雑を見つけるためにこの研究ではTRACEという方法を開発している。この方法は、昨年Nature...